乗馬

【必読】モンゴル乗馬安全マニュアル

乗馬は危険を伴います。

安全のために必ずこのマニュアルをよく読み、乗馬についての最低限の基礎知識を身につけてください。
事故などについて弊社は一切の責任を負いかねます。各自で保険加入するなど、万が一の事態に備えてください。

以上にご了承いただいた場合のみ乗馬いただくことが可能となります。
※乗馬前には誓約書にサインをいただいています。

1. はじめに

1-1. 目指すは、人馬一体!

ツォクトのツアーでは、乗馬での最高の喜びを人馬一体感だと考えています。
お互いの心が通じ合い、風になったようにどこまでも駆け抜けていけそうな気分になります。
他の何にも代え難い特別な体験となるはずです。

乗馬の開始時に、人工的な型を教えるなどの細かなレクチャーはありません。
実際に馬に乗りながら、技術を体得して頂きたいと思います。
モンゴルの遊牧民にとって、乗馬の先生は他ならぬ馬だからです。

大草原の下で全身の感覚に耳を澄ますことが人馬一体感への近道だと考え、ツアー全体を構成しています。
馬の気持ちに寄り添い、安全な乗馬を楽しみましょう!

1-2. お願い

●必ずスタッフの指示に従ってください。
わからないこと、うまくいかない事があれば遠慮せずにお尋ねください。
一人一頭の馬に乗っていただきます。(小さなお子様はご相談ください。)
ガイド同行ツアーの場合、1グループにつき数名の遊牧民と日本語通訳1名がそれぞれ馬に乗り同行します。

初心者の方へ
初心者の方は、乗馬前に初心者である旨をお知らせください。
おとなしくて乗りやすい馬たちですが、初心者やお年寄りには特に優しい馬を選びます。
また、慣れるまでは遊牧民が手綱を引きます。
参加者の熟練度に応じて、さらにグループを分けるなどします。
もしも周囲が上級者の方ばかりであっても、心身ともに決して無理はしないでください。

出発時間について
天候、体調、馬の状態などに合わせて柔軟に対応するため、出発時間は随時変更になります。
その都度お知らせしますので、時間までに準備をしてお待ちください。
暑すぎるときは時間をずらしたり、人数や体調に合わせて乗馬のあり方を調整したりします。
また、放牧されている馬が夜中に狼に追いかけられて遠くに逃げてしまっている場合は、馬のいる場所まで急遽車で移動することもあります。

原則ご自身での撮影はできません。
基本的に携帯やカメラによるご自身での撮影はできません。
日本語ガイドが撮影することができますので、お尋ねください。
その際の汚損・破損についての責任は負いかねます。

1-3. モンゴル馬についての予備知識

モンゴル人にとっての馬
モンゴル帝国創始者のチンギス・カンは、騎馬隊によって大帝国を築き上げました。
彼が奨励した競馬は、現代でも「ナーダム」という国家規模のお祭りでの大人気種目です。
遊牧文化を支えた馬は、モンゴル人にとって誇りの象徴です。

モンゴル馬の品種
「モウコウマ」というモンゴルの固有の品種です。
日本競馬の馬と比べると馬体は小さいですが力は強く、過酷な気候に適応する生命力があります。
細かな命令は出来ず、一頭一頭に名前もありませんが、遊牧民は馬の個性を見分けます。

繊細な動物です。
草食動物である馬の視野は、周囲285度と言われています。
前方と横方向だけでなく、乗り手の様子までほとんど見えています。
物を投げる、ブラブラさせる、急に近づく、手を突き出す、近くを走り回る、突然大きな音を立てるなどは馬が驚く原因になります。
乗馬中に馬が驚くと、後ろ足で立ち上がる、横跳びする、前足がガクッとなる、走り出すなどの行動をとる可能性があります。
また、パニックを起こしたり、防御反応として暴れることもあります。
馬の反応や態度に常に注意を払い、驚かせたり怒らせないようにしてください。
優しさと思いやりを持って接してください。

群れの動物です
馬は、周囲の馬と一緒に行動します。
後ろから馬が走ってきたら、つられて走り出してしまうことがあります。
群れでありながら個性があり、性格や好みは馬ごとに異なります。

高い知性を持っています
人間とのコミュニケーションを理解し、乗り手の感情を理解します。
人間が怖がっていると馬は敏感に察知し、言うことを聞いてくれません。
「私が主人だ!一緒に楽しもう!」という気持ちを持っているだけで、馬の反応は見事に変わります。

馬の耳は感情を表します
【危険度:低】 耳が左右色々な方向に向いている時は、リラックスしながら周囲を観察しています。
【危険度:中】 耳がピンと立って前を向いている時は、前方に注意を向けています。
【危険度:大】 耳が寝て後ろに向いている時は怒っています。乗り手を振り落とそうとしたり、他の馬を蹴ることがあります。スタッフに原因をお尋ねください。

2. 乗馬準備

2-1. 体調管理

●準備運動
各自で準備運動を行い、体調を確認してください。
心や体の具合が悪く運動に適していない場合は、ご自身の判断にて乗馬を控えていただくか、乗馬時間を短くするなど調整してください。

●飲酒について
前日の夜にお酒を飲む場合は、翌日に残らない程度にしてください。
また、乗馬の直前の飲酒はおやめください。
乗馬時にめまいがしたり、気分が悪くなったりすることがあります。
酩酊状態の場合、安全のためスタッフの判断で乗馬をお断りする事があります。

2-2. 服装について

動きやすく丈夫、かつ汚れても良い服装を、天候や季節に合わせてご用意ください。
馬が驚くので、カサカサと音のなる服、ヒラヒラした服、派手な色の服はご遠慮ください。
動きを妨げるので、大きなアクセサリーやリングなどの装飾品は避けてください。
服装に大きな問題がある場合は、乗馬することができません。
乗馬前の時間にスタッフにお尋ね頂くと確実です。

上半身の服装
長袖シャツやポロシャツが適しています。
動きやすくフィット感があるものを着用してください。
夏でも寒くなることもあるため、フリースやウインドブレーカーなどもご用意されることをお勧めします。

下半身の服装
乗馬用のものでも良いですし、綿のスボンなどでも問題ありません。
時々ジーンズを好む馬がおり、ジーンズは涎でベタベタになってしまう場合があります。
動きを妨げるため、ゆるい服装や長いスカート、フローリータイプのズボンは避けてください。
初心者はお尻が擦れる事がありますので、不安な方はサイクリング用パッドなどをご用意ください。

●靴について
落馬した際、アブミ(足を置く金具)に靴がひっかかったまま引き摺られてしまうと死亡事故に繋がります。
アブミに引っかかてしまうような甲の高いタイプの登山靴や、スパイクなどの靴底に引っかかりがたくさんある靴では乗馬になれません。
アブミから滑らず、それでいて緊急時にはスッと外せる靴がベストです。

・乗馬用ブーツ:かかと部分がしっかりと固定されているため、足が滑り出しにくくなります。
・スニーカー:スニーカーでも十分ですが、靴底が平らで甲の部分が高くないタイプをご用意ください。
・長靴: かかとが低いもので、靴底が滑りにくい素材のものなら乗馬できます。
・サンダル、ハイヒール、派手な色のものは控えてください。

●手袋について
・薄手の革手袋がベストですが、軍手でも問題ありません。
・冬は保温機能付きの手袋などもお薦めです。
・分厚い手袋は、手綱から伝わってくる馬の状態がわかりにくくなるので避けてください。
・素手でも乗馬可能です。

2-3. 持ち物・装備について

●持ち物
・休憩時のための飲み物やおやつ、緊急時のためのパスポートと病院でのお支払い用にクレジットカードをご持参ください。
・馬が驚くので、ゆらゆら揺れたり落としたりする可能性のある物は身につけないでください。
・首や肩からカメラやスマホをぶら下げることもお断りしています。
・パスポートやクレジットカードは、首から下げるケースなどに入れ、肌着の内側に収めると安心です。

●カバンについて
カバンは基本的にウエストポーチをご用意ください。
・リュック:馬が驚く原因とならないよう、確実に体に密着させてください。スタッフに預ける場合、汚損・破損等の責任は負いかねます。
・ショルダーバッグ:落とす可能性が高いため避けてください。

●貸し出し装備
ヘルメットとチャップス(すねあて)を無料で貸し出します。必ず着用してください。
・ヘルメット: 色々なサイズをご用意しておりますが、頭のサイズが特別大きい方はご自身でご用意ください。
・チャップス:アブミ(足を乗せる金具)が外れたときに、アブミの鉄部がすねに当たるのを防ぐためのものです。

●プロテクターについて
弊社ではご用意がありませんので、必要に応じてご自身でお持ちください。
尚、ガスタイプのプロテクターは自然界には存在しない作動音により馬が驚く可能性があり、弊社ではご利用をご遠慮いただいております。

2-4. 日焼け対策について

空気が乾燥しているため、日光が非常に強いです。
夏場は特に、日焼けを気にしない方でも日焼け止めは必須です。
日焼け止めは太陽に当たるところをくまなく塗ってください。
唇も日焼けすると痛くなることがあるので、日焼け止め成分入りのリップクリームの使用をお勧めします。

・帽子:ツバの広い帽子を被り、その上からヘルメットを被ってください。日焼けを気にされない場合は、ヘルメットのみでも問題ありません。
・サングラス:普通のものでも大丈夫ですが、激しい動きでもずれにくく、なるべく視界が広いものがお勧めです。
・バンダナ:目から下の日焼け対策には、呼吸を妨げ過ぎないバンダナなどがお勧めです。

日焼け対策装備の例

3. 乗馬開始

3-1. 馬に近づく

馬は、乗馬前からどんな人が自分に乗るのかを見極めようとしています。
こちらも馬の体格や毛の色、そして感情を表す耳などを観察してみてください。
馬が何を思っているのか、遊牧民はよく見ています。
良い雰囲気を保つようご協力をお願いします。
人馬共に緊張がほぐれ、乗馬の安全にも繋がります。

馬はリーダーシップを感じることで信頼を寄せはじめます。
馬が予測できない行動をとった場合でも、冷静に堂々と振る舞ってください。
それだけで馬の態度は変わります。

遊牧民が馬を捕まえて合図を出したのを確認してから、近づいてください。
必ず馬の左側から静かに近づき、馬があなたの存在に気づくようにしてください。
急に近づいたり、馬の後ろから近づいたりしないでください。蹴飛ばされることがあります。

3-2. 馬に乗る

遊牧民が合図を出す前に馬に乗らないでください。

合図が出たら、手綱か鞍についているサドルを持ち、左足をアブミにかけます。
その後、勢いよく馬を跨ぎ、右足もアブミにかけます。

馬が興奮したり、乗り手を信頼していない場合、乗り降りする時に振り落とそうとすることがあります。
最も無防備な瞬間であることを馬は知っています。
サドルをしっかりと持ち、跨ぐ際に姿勢が高くなりすぎないようご注意ください。

無事に乗れたら、他の人が全員乗り終わるまでその場で止まっていてください。

3-3. アブミ(足を置く金具)について

アブミは足の長さに合わせてスタッフが調整します。
長過ぎると足から外れやすく、短過ぎると足が痛くなりやすいです。
乗馬中でも適宜調整しますので、違和感を感じたらお知らせください。
最初は気持ち短いくらいが安全です。

アブミは、土踏まずよりも手前の位置まで入れるようにしてください。
アブミに足を深く入れすぎたまま落馬すると、足が引っかかったまま引き摺られてしまい大変危険です。

乗馬中にアブミから足を外さないでください。
アブミがぶらぶらすることで馬が驚いて、勝手に走り出してしまうことがあります。

足がアブミから外れそうなときや、外れたときは速やかに馬を止めてください。
周囲が走っていて置いて行かれてしまった場合は、大声を出して停止したことを伝えてください。
停止後、足が疲れやすくはなりますが、遊牧民に依頼してアブミを少し短くしてもらってください。

アブミと足の位置

3-4. 手綱の持ち方

手綱は、馬の口に付けられたハミという棒に繋がっています。
進行方向や姿勢の制御を行いつつ、馬の口に与える影響を最小限に抑えるのが理想です。
手綱の素材は皮紐などで作られていて、それほど硬くはありません。

利き手で手綱を持ち、もう片方の手で鞍を持ちます。
手綱は、親指側にループが出ている状態で持ってください。
強く握る必要はありませんが、引きたい時には引けるように握ってください。
動かし方は、ゆっくりかつ明確に。

最初に難しいのは、手綱の緩ませ加減です。
引きすぎず緩すぎず、適度な柔軟性を保ってください。
馬によって好みの緩み具合が違うので、感覚を探ってみてください。

わからなかったら日本語ガイドや遊牧民に指示を仰いでください。
初心者の方は、遊牧民が一緒に手綱を引きますのでご安心ください。

手綱の持ち方

3-5. 乗馬姿勢

腰を立て、背中をまっすぐにし、両かかとに均等に重心をかけます。
両足が馬の体に軽く接触するようにします。
足をアブミに乗せたまま、リラックスさせます。

初めは力の抜き方がわからず、緊張だけで筋肉痛になる場合もあります。
力が入りすぎて、馬を強く蹴らないようご注意ください。
慣れるに従って自然と力が抜け、疲れにくくなります。

4. 並足・速足

4-1. 手綱の操作方法

●前進
体重を前にかけ、手綱を前へ出します。
「チョウ!」と声を出し、馬の脇腹を軽く蹴ります。
一気に加速しすぎないよう、少しずつ加減を探ってください。

●方向転換
向かいたい方向に重心を移動させ、手綱を引き、馬の首をその方向へ向けます。
ただし、力任せに引っ張るのではありません。
優しく、かつハッキリと方向転換の意思を馬に伝えてください。

●停止
背筋を伸ばし、体重を後ろにかけ、手綱を引きます。
特に駆け足からの停止は、全身の力を使って後ろに引っ張ることが必要です。
コントロール不能な速度になる前に減速させてください。
速度に乗った馬は暴走し、止められなくなってしまうことがあります。
その時は丘の上に向かってください。上り坂は疲れるため次第に止まります。

4-2. 並足

全員の準備ができたら、ゆっくりと馬を進ませるように指示し、乗馬を開始します。
初めは前の馬のお尻についていってください。
それぞれ適度な距離を保ち、声や合図を出しあうなどのご協力をお願いします。
並足は、乗馬時の一番ゆっくりした速度です。
並足でも体が上下に揺れるため、慣れるまではに時間がかかるかもしれませんが、馬との感覚を把握してください。

●馬に声をかけてください。
馬が急な行動をしそうだと思ったときは、気勢を制するように馬に対して大声を出してください。
この場はあくまでも乗り手が支配していることを馬に知らせると、落ち着いて急な動作をしなくなることがあります。
なお、ただ声を出すだけでは効果がなく、馬に対して明確に声を出す必要があります。
遊牧民がよく声を出して落ち着かせていますので、参考にしてみてください。

●乗馬中には、適宜休憩を挟みます。
何かご希望があったり、体調がすぐれないなどの際は、遠慮せずにお知らせください。
休憩後には、アブミの調整を行います。
休憩以外でも、怖い時、疲れた時、アブミがおかしい時は遠慮なくお知らせください。

4-3. 速足

並足に慣れてきたら、徐々に速度を上げます。
速足という、駆け足手前の状態でしばらく走ります。
速度が上がるにつれ、手綱を緊張させます。

速足は一番揺れる状態なので、緊張して力が入りがちになります。
力を抜くことができるまでは、お尻が跳ねて痛かったり、バランスを崩しやすいのでご注意ください。

●大草原には、様々な障害物があります。
ネズミの穴、羊の毛、ビニール袋、ハリガネなどのゴミが見えた時、車道や柵などの環境が変わる時、動物や車が近づいてきた時など、適宜速度を落とします。

5. 駆け足・乗馬終了

5-1. 駆け足

速足にも慣れてきたら、いよいよ駆け足です。
最初は遊牧民が引き馬した状態で駆け足を体験していただきます。
速足と駆け足では世界が変わるぐらい振動や速度なども違ってきます。

駆け足で安全に走れるところは、緩やかな上り坂で地面がよく見えるところです。
大草原を思いっきり駆け抜ける爽快感は格別です。
速足と違って揺れも少ないですが、体感ではものすごく早く感じるかと思います。
駆け足が1分程度の場合でも、新鮮な体感であり、時間の感覚が引き伸ばされるようです。

駆け足の時間の長さは、熟練度に合わせて調節します。
遊牧民がダメだと言った時は駆け足ができません。
不慣れな方の乗馬は、人間だけでなく馬も疲れます。
最も落馬が多いのは、初心者の方が少し慣れてきた頃です。
また、駆けたくないのに駆け足を薦められた時は、遠慮なさらずハッキリとお断りください。

コツは「頭は動かさず、体はこんにゃくのように」。
日常の思考を切り離し、体の声を聞く事に繋がるかもしれません。

5-2. 駆け足時のご注意

●サドルをしっかりとお持ちください。
馬が地面の穴などにつまずいたとき、ガクッと衝撃がきます。
馬が倒れることはありませんが、落馬につながる危険があります。

●前方をよく見てください。
障害物やゴミを避けるために横飛びすることがあります。
また、馬が乗り手を信頼している場合は前方が危険であってもそのまま走ることがあります。
信頼を損なわないよう、馬と相談しながら走るように心がけてください。

●車に驚くことがあります。
舗装道路を横切る時に、馬が車に驚くことがあります。なるべく通り過ぎるのを待ってください。
待てない場合は、馬にしっかりと車を見せて乗り手が車を把握していることを知らせてください。
車に対して速度を落とすようにジェスチャーで伝えてください。
車に対して大声で話しかけることも、馬に対して「私は車に気づいているから安心だ」という合図を送ることに繋がります。

5-3. 駆け足後のお願い

●少し歩かせてください。
急に止まらず並足で少し歩かせてください。足を悪くしてしまいます。

●草を食べさせないでください。
馬は食べたがりますし、ご褒美に食べさせたくなりますが、体が熱い状態で草を食べさせると胃の中に草が貼り付き、内臓を悪くしてしまいます。

5-4. 乗馬終了

遊牧民が合図を出してから、左足のアブミがきちんと外れるか確認し、左側に降りてください。
左足がアブミに引っかかったまま降りてしまうと、とても危険です。

馬に感謝を伝える時には、馬の首を静かに撫でてあげてください。
馬を驚かさないよう、静かに離れてください。

7. 安全な落馬のために

7-1. 落馬の判断をする

落馬の危険は常にあります。
モンゴル人は「落馬して上手くなる」と言いますが、初めは「絶対に落馬しない!」という気持ちで乗りましょう。
それでもいざとなったら落馬しなければいけません。

まずは落馬した方が安全か、落馬せず踏ん張った方が安全かを冷静に判断してください。
体勢を崩してどうにもならなくなったときは落馬するしかありませんが、まずは耐えることを目指してみてください。
安易な落馬は馬に対しても落とし癖をつけることになりますし、乗り手も大怪我をする可能性があります。

やむを得ず落馬すると判断した場合、落馬する場所は柔らかそうな草原が理想です。
後ろから他の馬が来ていないか、周囲に岩などがないか確認してください。

7-2. アブミから足を抜く

落馬前に、必ずアブミから足が抜けるか確認してください。
絶対に足が引っかかったまま落馬してはいけません。引き摺られてしまいます。
「アブミに足が絡まったままの落馬 = 死」だと意識し、何がなんでも落ちないでください。

●万が一、アブミに足が絡まって落ちてしまった場合
サドル・タテガミ・馬の首、尻尾などとにかく掴まれるところに捕まるようにしてください。
非常事態であり、対応方法に正解はありません。

●生還者の対応(参考まで)
馬の尻尾を全力で掴みながら頭を持ち上げ、頭が地面や石にぶつからないようにする。
尻尾を思い切り引いて、頭と体を持ち上げてなんとかアブミから足を抜く。
骨折で済み、一命を取り留めました。
(スタッフが他社ツアーに参加した際の出来事です)

7-3. 横方向に落馬する

手綱が手に絡まらないよう確認し、落馬時には手放してください。
前のめりの横方向に落馬するようにしてください。
後ろに落馬すると蹴られて致命傷になる場合があります。
馬は遊牧民が追いかけて捕まえに行きますので、無理に捕まえておく必要はありません。

●受け身を取る
地面に手を伸ばして着地してしまうと大怪我の恐れがあります。
柔道の受け身のように体を丸めたり、頭を守るようにしてください。
もしも後ろから別の馬が迫っていた場合はすぐに避け、安全を確保した後、助けが来るまでその場でお待ちください。

8. 緊急対応

8-1. 対応の方針

落馬後はショック状態になる場合もあり、日本語ガイドが時間をとって丁寧に状況を確認し、必要に応じて対応を変更します。
落馬以外にも怪我や事故等のアクシデントがあった場合は、第一に優先して対応いたします。

弊社では、事故や怪我などについての責任は負いかねますので、病院の診察代金や旅程変更代金は自己負担となります。
海外旅行保険には必ず加入し、保険金の受け取り方法などについては事前にご確認ください。
意識がなかったり朦朧としている場合などは、スタッフの判断で病院に搬送し、お知らせいただいた緊急連絡先に連絡致します。

8-2. 状況の確認

頭を打っていないか、身体は動かせるか、痛いところはないか、手足のマヒやしびれはないか、記憶が曖昧になっていないか等、確認してください。

頭を強く打ったときは命に関わりますので、周囲の方に遠慮せずにお知らせください。
2日間程度(特にはじめの6時間)は、普段と変わったところがないかよく観察してください。
頭の中に出血がおこると、後から生命に危険が及ぶことがあります。
痛みが強くなるなど、状態が悪化する場合には対応致しますので必ずお知らせください。

同行者の方は、落馬した方の体をゆすったり叩いたりしないでください。
ケガ、出血、けいれん、嘔吐、つじつまの合わない言動はないか、ぼんやりしていないか、目線が合うか等、確認してください。

8-3. 対応の決定

状況を確認次第、①〜③のどのレベルでの対処かを判断します。

①乗馬続行
安全に落馬できた場合や擦り傷程度の場合、乗馬を続行することができます。
馬からの信用は下がっているため、かなり慎重に乗馬する必要があります。
しばらくは遊牧民に引き馬してもらってください。

・・・状態が悪化しそうな場合は、②へ

②応急処置
応急処置が必要な場合や、乗馬続行の意思がない場合は車を呼びます。
ベースキャンプや宿泊地、キャンプツアー中に同行する車の設備は、ごく限られた応急処置になります。
必要であれば、ウランバートルの病院へ向かいます。ツアー全体の中断もご判断ください。

例1)コブができたとき:タオルの上から氷のうなどで冷やして様子をみます。
例2)出血のある場合:清潔なタオルなどで強く圧迫して止血します。出血部は心臓よりも高い位置にあげてください。

・・・状態が悪化しそうな場合は、③へ

③病院へ緊急搬送
動けないくらい痛い場合、スタッフが生命に危険が及ぶと判断した場合は、車を呼びウランバートルの病院へ救急搬送します。
首都の病院とはいえ、日本ほど設備が整っているわけではありません。
帰国後に詳しい診察を受けることをお勧めします。

生命に危機が及ぶと判断する基準:
・意識がないとき
・乗馬する前と明らかに様子が違うとき
・左右の瞳の大きさが違うとき
・耳や鼻から、出血や液体の漏出がみられるとき
・けいれんを起こしているとき
・からだの一部分を動かせないとき
・頭を打った部分がへこんでいるとき
・前後の記憶が曖昧なとき
・吐き気や気持ちの悪さが続くとき、嘔吐を繰り返すとき

9. おわりに

最後までお読みいただきありがとうございました。

実際のところは馬の上で慣れていただくしかない内容ばかりですが、予備知識の有無で乗馬の体験は大きく異なるはずです。
馬との種も言葉も超えたコミュニケーションの萌芽を、少しでも感じ取って頂くことが私たちの最大の喜びです。
それこそが、モンゴルの騎馬文化の真髄ではないかと考えているからです。
家族経営の小さなの旅行会社ではありますが、モンゴルと日本の架け橋の一端を担う気持ちで、安全に楽しく乗馬をしていただけるよう願ってやみません。

それでは、モンゴルの大草原でお会いできる日を心よりお待ちしております。

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