
モンゴルで遊牧民と結婚した小山久子さんによる、モンゴル奮闘記シリーズ。今回は、秋の儀式の話。
夏の間に馬乳酒という恵みをもたらしてくれた母馬たちを、秋の初めに解放する季節。この節目に行われるのが、その年に生まれた子馬たちに焼印を押す儀式です。これは単に所有者を示すための実用的な目的だけでなく、夏の収穫への感謝と、来年の豊穣を祈願する大切な行事。作業の後には宴が開かれ、コミュニティの絆を深める一日となります。
※2013年時点のモンゴルのウンドゥルシレット地方のしきたりです。
馬乳の季節の終わりを告げる儀式
夏の最初の月に母馬を捕まえ乳搾りを始め、秋の最初の月に放す。時には暖かい天候が続くと、放すのが遅くなる地域があるが、早めに放すと子馬が肥えるので、越冬するには安心である。
秋の縁起の良い日に、子馬を繋いでいたゼル(子馬をつなぐ長いロープ)にアルツ(香草)の香を焚く。最後の乳搾りを行い、子馬のハズナ(無口頭絡)を外す。その後、ゼルを地面から外して巻き、杭を引き抜く。
その後の穴に、乳を垂らし、大麦や米を撒く。こうして、来年も子馬が沢山産まれ、馬乳酒ができるよう祈願する。そして、その穴に家畜がつまずかないように、穴を丁寧に埋める。
焼印と子馬の解放、そして宴
子馬のハズナを外す前に焼印を行う。赤く熱した印のついた鉄を馬の左尻に当てる。この行事は、もちろん祖先から引継がれてきたものであるが、近年になって馬泥棒も増え、その対策も兼ねて、焼印は行われているようである。
全ての焼印が終わると、使用した鉄の印を馬乳酒(アイラグ)に浸す。家によっては、その鉄の印から手のひらに直接馬乳酒の滴を垂らしてもらい、飲む。または、その馬乳酒をその後の宴会で飲んだりする。
焼印を終えると、子馬のレースを楽しみながら放す。まずは、母親を一定方向に追いたて、遠くにやる。その間、各自は1頭ずつ子馬を抱き、一斉に放す。誰が一番早く、母親馬に追いついたかを楽しむのである。中には、毎日放牧へ行っている方向へ迷わず走っていってしまい、爆笑の元となる。全ての子馬が母親と寄り添うのを見届けた後、宴会となる。

焼印の種類

執筆本文:小山久子 編集:長岡岳志
スタッフより|モンゴルの文化に触れるということ
モンゴルの遊牧民にとって、子馬に焼印を押すことは、夏の恵みに感謝し、来る冬に備える大切な儀式。馬乳の恵みを与えてくれた母馬への敬意と、家族や仲間との絆を確かめ合う時間でもあります。
ツォクトのツアーでは、そんな彼らの暮らしに根ざした、温かい文化の営みに触れることができます。ただ馬に乗るだけでなく、モンゴルの人々と馬との特別な絆を肌で感じてみませんか?
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