

サインバイノー!ツォクトモンゴル乗馬ツアーのSugiです。
「遊牧民」というとどんなイメージを持ちますか?
私がモンゴル遊牧民の存在を知ったのは子供の頃。移動しながら草原を馬で走り、ゲルでのんびりして、時間に縛られない生き方だと勝手に思っていました。
そんなイメージのまま大人になり、忙しい日本で暮らしていたときは、どこかあこがれに近いものがあった気がします。
でもモンゴルに関わる仕事をするようになると、想像とは全然違いました。
先日、遊牧民のツォクト社長とオンライントークを開催。テーマは「モンゴル遊牧民が語る、草原の暮らし」。1時間ちょっと話を聞いて、改めてモンゴル遊牧民の「自由」について考えさせられました。
遊牧の暮らしは全部自分で決められる、でも、決めたことのリスクも全部自分で背負うという意味での自由。
今回は、ツォクト社長から聞いた遊牧民のリアルな暮らしを紹介。
朝6時からスタート!土日も関係ないモンゴル遊牧民の1日

夏の朝は6時起き。女性は牛の乳搾り、男性は馬を集めて馬の乳搾りからスタート。
馬乳酒を作るための乳は2時間おきに搾るので、その合間も馬を近くに繋いでおく。
子供たちは羊の世話。昼間は放牧。夕方は柵に家畜を追い込んで、翌朝また掃除して……。
土日も祝日も関係なし。私が週末に寝坊している間も、朝6時から稼働。家畜が生きている限り、遊牧民の世話は続きます
冬はまた別の大変さ。雪が積もりすぎると家畜が大量に死ぬことも。何年もかけて育てた家畜が、一冬でなくなるリスクもアリ。だから若い世代が街へ出ていくと聞いたとき、そりゃそうだよなあと納得。
「自由に好きなことをしている」というイメージとは、かけ離れている暮らし。遊牧の「自由」は、家畜に対する重い責任とセットでした。
羊が空を見て逝く家畜解体の哲学

私が草原で解体を見たとき、まず驚いたのが羊が全く暴れないこと。暴れて逃げるかと思ったら、自分から体を委ね、すっとなくなっていく...。
なぜ暴れないのでしょうか?
まず、足を縛ってひっくり返すと、羊は自然とお腹が上を向いて空を見る姿勢になります。羊はいつも地面ばかりを見ているから、空を見せてもらえると思い、体を預けているのではとのことでした。
また、ツォクトさんによると、モンゴルの羊の解体は一番羊が苦しまない方法だとか。お腹を開けて手を入れ、心臓付近の動脈を指で押さえるというやり方です。一見衝撃的ですが、首を切る方法より苦痛が少ないとされています。
解体した羊は、胆のうとおしっこの部分以外は全部食べます。内臓も、腸に血を詰めてハムのように調理。命を丸ごと受け取る姿勢は、厳しい自然の中で生きる遊牧民たちの命への敬意のように感じました。
遊牧民が草原で育てた羊肉はなぜクセが少ない?

実は私、日本では羊肉が苦手でした。あの独特の匂いや臭みが気になって...、
ウランバートルの一部レストランでも同様で、私にモンゴルの食はキツイのかなと思ったことも...
それがモンゴルのツォクトさんのキャンプやゲルで料理を食べたとき、普通に美味しくてびっくり!うっすら羊だとわかることもあれば、わからなかったことも。
ツォクトさんに理由を聞くと、掃除と食べ物に違いがあるからではとのこと。
モンゴルの草原の草はハーブだらけで、羊は草原のハーブを食べて育つスーパーオーガニック。
その羊を毎日糞尿が残らないようにちゃんと掃除してあげて、清潔に育てれば臭みが肉に残りにくいとのこと。
お客さんにも「日本では羊が食べられなかったのに、ツォクトのご飯なら食べられた」と言ってもらえることがよくあります。
ちなみに、ウランバートルの一部のレストランで羊の匂いが気になる原因は、長距離トラックで運ばれてくる間に不衛生になってしまうからでは?とのことでした。
草原で育てて、草原でさばくのが、一番おいしい状態です。
馬乳酒はカルピスのご先祖様だった

馬乳酒(モンゴル語でアイラグ)とは発酵させた馬の乳。アルコール度数は1〜3%ほどで、飲めるのは草が育つ6月下旬〜10月ごろだけ。
実はモンゴルの馬乳酒、日本の定番ドリンクカルピスと関係があります。
100年以上前、カルピスの創始者がモンゴル旅行中に体調を崩したとき、馬乳酒を飲んで元気になり、カルピス開発のきっかけになったとか。
スタッフのたけっし〜さんが「馬乳酒に砂糖をたっぷり入れるとカルピスの味になるよ」と教えてくれました。夏にモンゴルへ来たらぜひ試してみてください!!
ちばみにウランバートルのスーパーでも売っていますが、発酵が進んで酸っぱくなっているのでおすすめしません。
スマホもソーラーパネルも使う現代の遊牧民

「大草原では充電も電波もないんじゃ?」と思われるかもしれませんが、デジタル機器をバッチリ使いこなすのが現代遊牧民。
ソーラーパネルでバッテリーに充電して、スマホも電気製品も普通に使用。モンゴルは平地が多いのでアンテナが遠くまで届きやすく、山の上に出れば電波も通じます。
遊牧民ゲルの子どもたちもYouTubeをよく見ていて、何人かはツォクトのインスタフォロワーさん(笑)。
もちろん、奥地に行くと電波が届かずデジタルデトックスになるのですが、遊牧民=昔ながらの暮らしではないということです。
月にミルクを捧げて感謝

モンゴルの宗教は主にチベット仏教ですが、日常に根付いているのはもっと原始的な自然への感謝。そこはちょっと日本と似ている部分がありますよね。
例えば、月にミルクを捧げて感謝の気持ちを示したり、朝のお茶を空(自然の神様)に感謝して捧げたり。また、お酒を飲むとき、天と日に先に捧げてから飲むこともあります。
天気が草原の状態、ひいては家畜の健康を左右するので、遊牧民の暮らしは自然への感謝が信仰と一体になっています。
モンゴル遊牧民の暮らしが教えてくれること

今回、話を聞いてみて感じたのが、遊牧民は責任のある自由の中で生きているということ。
仕事を休む自由も引っ越す自由もあり、決められた時間ではなく全部自分で決めてOK。
だけど、決めたことのリスクは、全部自分で背負わなければなりません。
- 仕事をさぼったら家畜が死んでしまう
- 放牧のタイミングを間違えたら、何年も育てた羊を失う。
- 冬の準備が足りなければ全滅することもある
- 誰も助けてくれないし、補償もない。
自分で決めていいということは、その決定の結果もまるごと自分のものということ。それを受け入れた上で草原で暮らすのが遊牧民。改めて大変なライフスタイルだと感じました。
ただ、ツォクトさんがこうも言っていました。
「辞める人ももちろんいる。でも馬が好きで、この暮らしが好きで続けている人もたくさんいる」と。
彼らは好きなことをするために、そのリスクを自分で受け入れています。だから乗馬ツアーで遊牧民と一緒に走っていると、イキイキして見えます。
草原に来ると、そういう遊牧民の暮らしに実際に出会えます。ぜひ一度、来てみてください!!
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