モンゴルで遊牧民と結婚した小山久子さんによる、モンゴル奮闘記シリーズ。今回は、皮なめしの話。
遊牧民にとって、家畜の皮は衣類や道具を作るための貴重な資源である。夏と秋の境目に行われる「皮なめし」は、硬い皮を驚くほど柔らかく、丈夫な素材に変えるための古くからの知恵と技術の結晶だ。馬乳酒から作るなめし液や家畜の糞、燻製の煙など、身の回りにあるものを巧みに利用し、時間と労力をかけて暮らしの必需品を生み出す。
※2013年時点のモンゴルのウンドゥルシレット地方のしきたりです。
自然の恵みを利用したなめし液
夏と秋の境に皮をなめす作業が始まる。まずは、夏の馬乳酒やシャル・スー(乳を蒸留した後の液体)からガン(gan)と呼ばれる皮をなめす薬を作る。ほとんどが蒸留したシャル・スーに塩を加えて作る。作ったガンの中に皮を浸し、時折混ぜるとガンが中に浸透して柔らかくなり、再び硬くなることが無い。
しかし、子羊や子山羊の皮は、ガンに浸さない。タラグ(ヨーグルト)やアールツ(乾燥凝乳)に塩を加えたものの中に浸す習慣がある。
また、春に冬営地の家畜小屋にある糞の中に、大型家畜の皮を埋めても柔らかくなる。湿気がある中で、この作業を行うとより柔らかくなる。湿気があまり無い場合は、皮をなめす道具を使ってもっと柔らかくすることが重要である。しかし、逆に皮をなめす道具に湿気は禁物である。よって、湿気の状態を考えて、皮をどの方法でなめすかが重要である。
時間と労力をかけるなめしの工程
皮をなめすには、何日もかけて作業を行う必要がある。革紐を作るには、浸して細く切った後に木か石でなめすなどして柔らかくする方法がある。また、牛糞や馬糞を燃した煙で燻したり、木槌で一つ一つ叩いて均等に柔らかくすれば、なお良い。
その他、どの部分を何に使うかも重要である。のろじかの雄の首の皮は、丈夫なので馬を捕まえるためのオールガ(馬捕り竿)の輪の部分を作るのに適している。
布のように柔らかく、暮らしを支える道具へ
正しくなめした皮はまるで布のように柔らかくなり、遊牧民の様々な重要な道具を作り上げるのである。
私の持っているムチの皮の部分のなめしが悪く、とても硬い。それを見た1人の遊牧民は、皮の部分を水に浸し、それが完全に乾く前に、全体にむらなくタルバガンの油を塗ると良いと教えてくれた。残念ながら、タルバガンの油を入手することができす、ムチはそのままである。
執筆本文:小山久子 編集:長岡岳志
スタッフより|遊牧民の暮らしを支える、伝統の技
モンゴルの遊牧民にとって、暮らしに欠かせない衣類や道具は、全てが自然の恵みから生まれます。家畜の皮を、時間と労力をかけて柔らかく丈夫な素材に変える「皮なめし」の技は、まさにその知恵の結晶です。自然の恵みに感謝し、ものを大切に使い続ける、遊牧民の哲学を感じられます。
ツォクトのツアーは、単にモンゴルの景色を巡るだけでなく、こうした彼らの暮らしの営みに触れる旅です。
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